「道ありき」
 
三浦綾子は、日本だけでなく韓国でも広く知られている人です。彼女が書いた本を読んでいると、まるで信仰の証の本を読んでいるような感じがして、霊的だと思われます。彼女は実に信仰の人でした。一日一人ずつ必ず福音を伝えようと決心し、毎日実践した人でもありました。
しかし、三浦綾子は最初から信仰の深い人ではありませんでした。彼女は露骨にクリスチャンを嫌がりました。「私はクリスチャンなら大嫌いです。何なのよ、君子のふりをして...あなたに説教を聞く理由なんかないわよ。」「クリスチャンって偽善者だわ。清いふりをして、自分も飲み屋に行きたがっているくせに、飲み屋みたいな所へ行くやつらは救われない罪人だというような目で見てるんじゃない。」「クリスチャンって精神的な貴族だわ。私たちをどんなにかわいそうな人間かと、高いところから見下ろしているんじゃないの。」
彼女は、クリスチャンに会えるといつもけんか腰で罵倒したりしました。
そのような彼女に、180度の変化が現れました。それは、自分がそんなに誹謗していたクリスチャンになったことでした。それも信仰のないクリスチャンではなく、ひたすら伝道のために数多くのベストセラーの本を書いた作家になりました。
彼女は自分の本で、このように告白しました。「療養中である私は教会に行くことができなかった。毎週の日曜日に教会に行って、説教を聞くことができる健康な人たちが、私はうらやましかった。じっとして一人で横になっていると、たまらなくて聖書の話が聞きたい時が多かった。例えば、軒下に赤い旗でも立てておくと、教会の牧師のどなたかが通り道でそれを見て入り、聖書の話を聞かせてくれたらどんなにいいのかと考えたほど、私は説教が聞きたかった。」
洗礼を受けた後の三浦綾子の姿は驚くほど変わりました。彼女はこのように書いています。「洗礼を受けたその日から私はあまりにもうれしくてたまらなかった。心の中に火がついたようだった。私は神様に祈った。『神様、マフジさん、ハルコさん、リエさんこの3人がどうかクリスチャンになってほしいです…この3人がクリスチャンになったら、私はいつ死んでもいいです。』」　そして彼女は、ギプスベッドで苦しみながら三日間、伝道の手紙を一通ずつ書き、知人に送りました。
何が彼女をこのように驚くほど変えたのでしょうか。
それは、「ひと」でした。前川正という人です。その人を通じて、キリストの愛が彼女に流されたからです。彼は、霊と肉が全部死ぬ病気にかかっていた三浦綾子に、最善を尽くして回復させようとしましたが、綾子は最後まで拒絶します。とても切なかった前川は石を拾って自分の足の甲を打ち始めました。その姿に戸惑っている綾子に、前川はこう言います。「あやちゃん、僕は今まであやちゃんが勇気を出して生きていくようにどれだけひたすら祈ったのか分かりません。あやちゃんが生きるためなら、僕の命も惜しくないと思いました。しかし、信仰不足の僕には、あなたを救う力がないということが分かりました。それで、無能力な僕を罪するために、自分にむちを打っているのです。」その時、綾子は尽きせぬ涙を流し、彼の愛が体中を包み込むのを感じたと言いました。そして彼女は、前川の愛の源であるイエス様を信じるようになりました。その後、彼女は酒とタバコをやめて、他の男性との交際もやめ、イエス様と交わりをすることになりました。
綾子は、前川の後ろに映る不思議な光を感じたと話しました。それは、イエス様を通じた愛の光だったのです。人が変わることは、確かに奇跡です。体が変わることより内なる人が変わるということは、とても簡単ではありません。内なる人は、愛によってこそ変わります。内なる人は、ハートです。ハートはハートだけで変えます。もし、イエス様の完全な愛が私たちを通じて他の人に映れば、どんなに頑悪な人でも変わるようになるでしょう。世の中が頑悪ではありません。私たちの愛が乾いたのです。私たちを通じてキリストの愛の光が照らされると、世の中の闇は立ち去ります。道はここにあります。つまり、愛の道です。