親戚のような隣人

親戚のような隣人という言葉は実に情感が湧く言葉です。昔、私たちは隣人どうしとても仲良く暮らしていました。辛いことがあれば互いに助け合い、良い事があれば自分のことのように喜び、美味しい物を分かち合いながらまるで家族のように生活していました。そのため、遠くに離れている親戚はむしろ他人のように思われ、隣に住んでいる他人が親戚のように親しくなっていたのです。親戚のような隣人という言葉は最も愛のこもった言葉ではないでしょうか。
しかし、この親戚のような隣人が段々いなくなっているようで、もどかしさを感じます。文化が発達していくにつれ、隣人間の愛がどんどん冷めていきます。
去年の正月に2件の凄まじい隣人間のトラブルが起きました。ある2人の人が正月なので家族をつれて久しぶりに両親の家を尋ねました。子供たちは興奮していたに違いありません。そのため、子供たちはふざけながら家中を走り回っていたのでしょう。ひょっとすると子供たちの遊びは度を越していたのかもしれません。下の階に住んでいた人たちが我慢しきれず、文句を言いに来ました。その一つのトラブルによって兄弟が刺され、死亡する事件が起きました。そしてもう一つのトラブルによって、下の階に住んでいた人が上の階に住んでいた人の家に火を放ち、その人たちにひどい火傷を覆わせました。親戚のような隣人が恐ろしい隣人に変わっていき、敵に変わっていきます。敵と一緒に住むことになると言葉では言えない苦痛に襲われるでしょう。誰が被害者か加害者かのところではなく、すべての人が被害者になり、互いに辛くなる一方です。下の階に住んでいる人だけが辛いのではなく、上の階に住んでいる人も同様に辛いのです。お互いが地獄に生きることになります。このようなトラブルをアパート文化が生んだ弊害として扱う人もいるかもしれませんが、根本的な原因はアパート自体にあるのではありません。アパート間の厚さをどんなに厚くしても問題は解決できません。問題は人々の心の中にいます。産業が現代化になるほど人々の心は枯れていきます。隣人間の温かい愛が段々冷めていきます。’層間騒音’によって優しい隣人が敵に変わりつつあります。人々はコンクリートの中で自分だけの世界を築き上げていて、その世界を脅かす存在が現れると直ちに攻撃を加えます。問題はアパートの設計にあるのではなく、私たちの心の中にあるのです。人々の心の中に愛がありません。隣人を自分のように愛していればどうしてむごたらしい事件が起きるでしょうか。子供が走り回ることに腹を立て、刃物を振り回す人はきっといないでしょう。愛は何よりも忍耐強いと言います。忍耐は愛の外面的な姿とも言えます。このような愛が私たちの心の中にあれば、どんな騒音でも愛のハーモニーに変わるでしょう。愛は広く、そして遠くを見る力です。隣人を自分の家族のように思い、後の結果を慎重に考えるなら、きっとひどい事件は防げるはずです。少しの間の騒音に我慢できず、偶発的な犯行に及んだ人は明らかに後悔しているでしょう。’なぜ私はその時もっと我慢出来なかっただろうか!’(これを言い換えれば、’なぜ私はその時もっと愛さなかっただろうか!’になる)　一瞬の感情に襲われ、自分の人生だけではなく、多くの人の人生を破滅に陥れたことに後になってようやく気付くのです。愛による行動は決して後悔しませんが、憎しみによる行動は必ず後悔を残します。人生の最も大きな後悔は人々をもっと愛さなかったことです。