「謄写版」
 
ある人がいました。彼は、黄海道（ファンへド）のある田舎で生まれました。元々貧乏な家だったものの、彼が２歳の時、父親まで世を去りました。非常に貧しかったので、食事は小麦のお粥で済ましながら辛うじて生きていました。小学校の時は、授業料を払うことができず、登校停止までされました。教師になるために師範学校に志願しましたが、受かりませんでした。彼は、家に帰る面目がなく、平壤（ピョンヤン）に留まることにします。銭湯の人夫をした後、謄写版の営業社員だった従兄弟の紹介で、平壤箕城医学講習所の給仕として勤めました。当時、彼は１５歳でした。一日中、医学の教材を黒いインクで謄写することが彼の仕事でした。毎日3000枚ずつ、インクをつけたローラーで一枚、一枚謄写することは簡単ではありませんでした。昔は、今のようなコピー機がありませんでした。最初は何の意味か分かりませんでしたが、毎日同じ教材を繰り返して謄写する間、少しずつ目に入るようになりました。それで、彼は医学に関心を持つことになりました。一人で医学の勉強を始めました。医学大学は卒業しませんでしたが、医学講習所の給仕として勤めた経歴が認められ、医師試験を受けられる道が開きました。謄写版に対する彼の態度は、180度変わりました。教材一枚に、夢と目標を込めて、丁寧に謄写しながら、夜も昼も試験の準備に集中しました。飢えと貧乏から免れたいという熱望から、彼は医師試験に挑みました。やっと、彼は医師試験14科目に全部受かり、19歳に最年少で合格します。平壤の銭湯で「お前！」と呼ばれた彼は、明洞聖母病院で「ドクター！」と呼ばれました。彼が、つまり「鄭（ジョン）食品」の名誉会長である「鄭　在遠（ジョン　ジェウォン）」会長です。彼が作った代表的な商品が、「ベジミル（Vegemill、鄭食品の豆乳商品）」です。
　私たちは、今日、豊富が呪いである時代に生きています。何も不足するものがないため、若者たちに意欲や熱情がありません。過去の代表的な生の原動力は、「ハンガリー精神」でした。スポーツ選手もハンガリー精神で世界を制覇し、ただ飢えと貧乏から逃れるために命をかけて働き、勉強し、戦いました。もし、家が豊かだったら、鄭会長も、ベジミルも存在しなかったでしょう。 鄭会長が、正式に医大を卒業した人よりもっと早く医者になったのは、頭が良いためでも、状況が良いためでもありませんでした。ただ、彼は他人より飢えていたからでした。それで、机の前に座って勉強することより、謄写をしながら勉強したほうが効果的だったのです。豊かな人は、熱心と推進力が弱いです。不足を感じる時に、最大の力が現れます。貧乏が原動力です。飢えが跳躍のエネルギーです。
　他人より良くない環境、貧乏を悲観してはいけません。これこそ、自分に与えられた最高の祝福の条件だということを知ってほしいです。その時こそ、自分から自動的にハンガリーのエネルギーが出されるからです。世の中で最も祝福された人は、空腹の時にハンガリーのエネルギーをうまく使う人です。逆に、一番かわいそうな人は、貧乏の時に自分は呪われたと思い、ハンガリーのエネルギーを呪いのエネルギーに変える人です。そして、平凡な人は、満腹の時に安住し、自ら熱情のエネルギーを抜いてしまう人です。環境が人を作ることではありません。その環境を見る態度が人生を決めます。
　あなたの環境は今どうですか。
その環境をどう見ていますか。それがあなたにエネルギーを与えていますか。あるいは、持っていたエネルギーも抜き出していますか。貧乏と苦難の環境が、あなたを最高にしてくれる最高の賜物であることを覚えてください。立って謄写をした人が、座って謄写版で複写された資料を持って勉強した人より、もっと祝福された人です。彼にだけ噴出されるハンガリーのエネルギーがあるからです。
ハンガリーな人には、必ずハンガリーのエネルギーが出ます。ハンガリーな状態から脱出するように与えられるプレゼントです。
「心の貧しい人々は、幸いである、天の国はその人たちのものである。」（マタイ5:3、新共同訳)