猿の欲望

熱帯地方でよく知られている猿の捕らえ方があります。
猿はとても行動が速く、木に上手に登るため、捕らえるのがかなり難しいです。特に何の傷も与えず、生きたまま捕らえるのはさらに難しいです。しかし、猿は欲深いため、意外と簡単に押さえ捕ることが出来ます。猿という動物は非常に欲が深いため、一度手に入れた餌は絶対に放そうとしません。人が近づいて来ても絶対に放しません。猿はとても愚かな生き物です。欲望が猿を愚かなものにさせる訳です。手の指を伸ばして入れればちょうど入るほどの穴があいた箱の中に猿の大好物である堅果類(クリやクルミのように堅い殻をもった実を指す)を入れておけば猿は箱の中に手を入れ、出来るだけ多くの餌を掴んで手を抜こうとします。
しかし、箱の穴からは拳は絶対に抜けません。そうにもかかわらず猿は決して諦めません。狩人が近づいて来ても最後まで手を開こうとしません。手さえ開けばすぐに逃げることが出来るのに、欲に目が眩んで手を開くことが出来ません。ひとつかみの餌と自分の命を取り替えるほど猿は愚かです。
ところが人間も同様です。むしろ人間の方が猿より欲張りかもしれません。世の中にある数多い恥と屈辱なことは人間の欲望から生れます。欲望は人間の人生に致命的な罠となります。しかし、多くの人々は物事を経験する前にはそう思いません。自分は絶対に安全だと確信までします。従って人間は愚かな者です。真の自由とは握っていた自分の拳を開くことから始まります。富に対する欲望の拳、性的な快楽に対する欲望の拳、嘘に対する欲望の拳、子供に対する欲望の拳を開かなければなりません。出来るだけ早く開いた方がよいのです。そうすることによって自由になれます。他人や環境が人々を辛くさせるのではなく、自分の欲望が自分を殺します。欲望の拳を開けない人は必ず猿のようになります。
一緒に欲望の拳も開いてみましょう。
それから一度深呼吸をしてみましょう。自分を縛っていた死の金鎖を切ってしまいましょう。
死の鎖は他人によって切れることではありません。ただ自分だけがその鍵を握っています。
もし、他人が自分の手を開こうとすると他人が自分の物を奪おうとするという誤解を招くため、もっと手を握りしめます。
欲望は賢い人を愚かにさせます。猿が自分の目の前の利益だけに目が行き、狩人に捕えられ死ぬということを考えられないように欲に目が眩むほど遠くを見る視野が狭くなります。
賢い人は遠くを見る人です。自分のことに対しても遠くを見ることができ、他人の心までも配慮することが出来る人です。信仰の人は賢い人より遥かに遠くを見る人です。信仰の人は隣人だけではなく、常に神様を仰ぎながら生きる人です。信仰の人は既に結果を分かっているため、欲望の奴隷になれません。
欲望の拳を開けない人は必ず小を貪って大を失うようになります。
‘むしろ、人はそれぞれ、自分自身の欲望に引かれ、唆されて、誘惑に陥るのです。
そして、欲望ははらんで罪を生み、罪が熟して死を生みます。’(ヤコブの手紙1:14,15)