６セントの正直

「正直なエイブ」これはリンカーン大統領のあだ名です。
彼が若い時に村の住民たちがつけたあだ名です。
リンカーンは小学校にわずか9ヶ月しか通えなかったのです。彼は靴磨きの息子でした。そんな彼が米国の大統領になりました。リンカーンが国民から信頼と尊敬を受けたのは、何よりも彼がいつも正直な道を歩んだからです。
リンカーンは「正直と知識は私の宝であり、財産だ」とまで言いました。
いったいわたしたちのうちどれほど多くの人が正直を財産だと考えているでしょうか？むしろ正直であれば、財産が減ると考えているのではないでしょうか？ほどほどのうそとほどほどの要領が人生の近道だと思ってはいないでしょうか？ともすれば、正直は知識用であり、実践用ではないと考えるかもしれません。しかし、正直は人生の中で実践するともにだけその真価が発揮されるのです。
正直についてリンカーンの面白い逸話があります。
ある日、商いを終えたリンカーンは夜遅くまで一日の決算をしました。しかし問題が生じました。どんなに計算をしても６セントが残ったのです。しばらく考えた末、常連のお客様であるアンディーおばあさんにお釣りを少なくあげたことに気づいたのです。
彼は店を閉め、その遅い時間に遠く離れたアンディーおばさんのもとを訪ねて行きました。
「アンディーおばあさん、エイブ（リンカーン）です。すみません。私が誤っておつりを６セント少なく差し上げてしまいました。」
おばあさんはびっくりしました。
「お兄さん！この６セントのためにこんなに夜遅い時間に遠くまで来たっていうの？」
「６セントでなくて１セントでも当然お返ししなくちゃいけないんですよ。」
「それはそうだけど、次に私が店に行ったときに返してくれても別にいいんじゃないの？」
「いいえ。今日の誤りは今日のうちになおさないと。」
「君はうわさ通り本当に正直な子だねえ。君はこれから必ず大人物になるだろうよ。」
人々は「６センチの正直」をたいしたことではないと考えます。しかし、正直の神髄は、小さいことで現れるのです。大部分の不正直はここで現れるからです。本当に難しいことは小さいことに正直であることです。大きなことに正直であることは簡単です。何故なら、すぐにばれやすいからです。正直な人は小さいことに正直な人です。うそをよくつく人も、よく見ると、小さなことにいつもうそをついています。
何であれ小さいことが重要なのです。
小さいことに誠実でない人は、絶対に大きなことにも忠実であり得ないのです。
何故なら、小さいことに誠実であることが、大きなことに誠実であることよりも大変だからです。
「６百万ドルの正直」は簡単ですが、「６セントの正直」は誰もができることではないのである。
偉大な正直は６百万ドルの正直ではなく、６セントの正直です。