感情管理

人生を一言で言えば、「管理」ではないかと思う。
管理だけをきちんとしても、人生は充分に満足なものになる。
もちろん「時間管理」「財産管理」「健康管理」を人々は一番に考える。
だが、じっくり考えてみると、時間や物質、健康管理はすべてその結果が自分自身に限定される。
時間をちゃんと管理できなければ、自分自身の人生を無駄使いすることになり、物質管理に失敗すれば、自分の財産がなくなり、健康管理がうまくできなければ、自分の体だけがだめになる。
しかし、感情はそうではない。感情管理をちゃんとできなければ、相手方に致命的な痛みを与える。
このような意味において、「感情管理」は他のどんな管理よりも重要なものと見ることができる。
新聞に胸の痛む記事が掲載された。
３０台前半のK氏は、地下鉄の入り口で、５０代中盤のA氏が機嫌悪そうににらみつけたという理由で口論をした。その後、K氏は、恨みを抱いてA氏を最後まで尾行した。とうとうA氏が友達と一緒に近くの飲食店に入るやいなや、K氏は自分の家に行き、凶器を持って来て、飲食店の近くで３時間を越えてA氏を待った。A氏がひとりで帰宅する時間を利用して、A氏のわき腹と内ももに凶器で突き刺し殺害した。
Ｋ氏は、警察の調査で「酒に酔った状態で腹立ちまぎれに偶発的に犯行に及んだ」と語った。
どうしてこんなことになるのだろうか？機嫌悪そうににらみつけたという理由だけで人を殺すことができるのだろうか？
この記事は、現代人がいかに自分の感情の管理ができずにいるかをよく示している。その瞬間の感情のまま、殺したければ殺してしまう世の中になってしまった。
どんなに酒に酔ったとしても、気は確かなのだ。3時間以上も相手を逃さずにきちんと尾行し、さらにその間自分の家にまで凶器を準備して来る緻密さまで見せた。これは、絶対に酒のせいにできることではない。自分自身の瞬間の感情をコントロールできないところから生じる悲劇だ。
感情調節ができない人、感情の管理をちゃんとできない人は、必ず後で取り返しのつかない後悔をすることになる。なぜなら、それだけ大きなものを失うからだ。
お金の管理に失敗すれば、貧しい人生を歩むことになり、
時間管理に失敗すれば、自分の人生を無駄使いすることになり、
健康管理に失敗すれば、自分の人生をまるごと失ってしまうが、
感情管理に失敗すれば、他人の人生まで失わせる。
悪い感情は、その瞬間にわたしたちに非常に多くのことを要求する。他人の生命まで平気で要求する。だから、感情の奴隷にならないようにしなければならない。感情の奴隷は、物質の奴隷、人の奴隷よりずっと悲惨な結果に責任を負わなくてはならない。
もちろん、その瞬間は感情が傷つくこともあるだろう。その人が憎いこともあるだろう。
しかし、その時少しだけ我慢すれば、１を失い１００を得るということを覚えておこう。忍の字が３つあれば殺人をも避ける（ならぬ堪忍するが堪忍）ということばもあるではないか？
感情の管理をできない人のまわりは、いつのまにか緊張と恐怖の雰囲気だ。いつ感情が爆発するかもしれないから、いつも不安だ。まるで時限爆弾のようだ。
しかし、感情の管理をよくできる人のまわりは、いつも平和と愛があふれる。もし、感情の問題が生じても、感情処理班がよく分解してしまうからだ。
現代人は、感情管理をあまりにもなおざりにしているようだ。知恵のある人は、どんな管理よりも感情管理に気を使う。感情管理の威力を誰よりもよく知っているからだ。
聖書は言う。
「怒るのに遅いようにしなさい。人の怒りは神の義を実現しないからです。」（ヤコブの手紙1:19,20）
「怒ることがあっても、罪を犯してはなりません。日が暮れるまで怒ったままでいてはいけません。」（エフェソの信徒への手紙4:26）