「寡黙のリーダーシップ」

世界的な半導体メーカであるローム(Rohm)社の佐藤研一郎社長の「成功経営秘訣」は、「寡黙のリーダーシップ」だといわれる。
彼は、時々6時間の会議で一言もせず聞くだけしているという。
社長がたくさん言葉を発すると、部下らがちゃんと傾聴しないため、
その言葉の影響力がむしろ小さくなるからだそうだ。
業務指示は3ヶ月に1回だけきちんとする。
彼は音楽が好きで一時はピアニストを夢見たこともある。
そのため、彼は企業の経営をオーケストラの指揮と比べた。
「舞台の指揮者は言葉で指揮ってはならない。」
人々はたくさん話すと自分の意思がよく伝われ、その通りになると思い込んでいる。
それで、少しだけ話すと不安になり、物足りないと感じる。
影響力とは言葉の数に比例することではない。
むしろ、たくさん話すことによって、藪をつついて蛇を出すことになる場合がもっと多い。
言葉は、少なくして生じる副作用より、たくさん発して生じる副作用のほうがもっと多い。
リーダーになるためには言葉を少なくしなければならない。
そうすると、言葉による過ちも少なくなり、言葉に権威が生まれる。
リーダーはベンチにいるコーチのような人だ。
直接走る人ではなく、作戦通り選手らを走らせる人である。
リーダーは指揮台にいる指揮者のような人だ。
直接すべての楽器を演奏するのではなく、楽譜通り演奏者らを演奏させる人である。
自分が直接演奏する指揮者はもう指揮者ではなく、
自分が直接走るコーチはもうコーチではない。
本当のリーダーは現場を一々干渉する人ではなく、全体の方向を導いてくれる人である。
分野別の専門性は彼らに全面的に任せながら、全体の流れを調節してくれる人である。
そのため、リーダーは全体を見る目を明るくしなければならない。
「干渉型指導者」より「委ね型指導者」が寡黙型指導者ではないかと思う。
過度な干渉は人を萎縮させる。
人は干渉を受ける時より、信じて任せてくれる時にもっと熱心と力を発揮する。
干渉を受けると、その地境は指導者の一人で狭まるが、
委ねを受けると、各自の能力によって限りなく広がる。
「主よ！私が寡黙な人になりますように！」